2003年度春教組行事の最後を飾る行事として,11月7日・14日・21日の3日間にわたって第2回春教組「力量UPセミナー」を青年部との共催で開催しました。今回は,小牧市立小牧中学校教頭の玉置崇先生をお招きし,「授業を創る!」をテーマに3回連続の講座でご講演いただきました。教師が最も大切にしなければならない「授業」について,玉置先生が実践されたビデオでの授業記録や具体的な教材による模擬授業をもとに,授業を子どもたちとどのように創っていくのか,また,そのために必要な教材研究をどのように行うべきなのか,多くの具体的なヒントを私たちに与えていただきました。
どの講座も多くの参加者とともに,「授業の楽しさ」を実感できる充実した講座となりました。
アンケートより
- 講演を聴かせていただいて,「早く学校に戻って子どもたちと楽しい授業がやりたい!」と思いました。そのためには教材研究をもっともっとやらねばと痛感しました。今後も努力をし続けていきたいと思いました。
- 模擬授業を通して,毎日の授業で使える方法,見通しを持って教材研究をしていく必要性の両方を教えていただけて,とてもありがたかったです。
- 「教科書の行間を埋めていく」という教材研究の方法が参考になりました。
- 「子どもの意見・発言に価値を与えてやる」という言葉がとても心に残り,実践したいと思いました。
- 日ごろから見逃している点がよくわかり,「目からうろこ」という感じでした。
- 日々の些細な言葉がけや子どものつぶやきの活かし方がビデオで具体的に分かりやすく説明してもらえてよかった。
- コンピュータを使うというとどうしても敬遠していましたが,いろいろな使い方ができること,また,子どももすごく興味を持つということに,とても魅力を感じました。がんばって使ってみたいです。
連続講座T 11月7日(金)「子どもの声と動きで授業を創る技」
子どもの言葉と動きを生かして,知的活動を生み出すために・・・
- 子どもの発言を拾うときなどに,子どもたちとのコミュニケーションをとるためには,教師はものわかりが悪い方がよい(ものわかりが悪いようにわざとふるまう)。言葉のやりとりが拡がる。
- 授業は言葉で文化を創る…。教師が言葉の一つ一つを大切にすると,子どもも大切にしていく。
- 教師の発問や指示での子どもの表情や動きを見逃さない。リアルタイムで素早く反応をキャッチして,それらの子どもの考えや発言を引き出していく。
- 子どもの発言の理由を教師は聞きたがるが,どこでそれを聞いたらよいのかタイミングを計って我慢する。
- 子どもの発言が,教師の案から大きく拡がったりずれたりすることがある。この場合,初期の段階でしっかり確認・整理して条件を整備してやることで,子どもたちが混乱しないようにすることが大切。子どもの間違いをそのままとらえるのではなく,それを認めつつ本来あるべき方向へと導く。そのためには教材研究は欠かせない。
- 集団追究が大切である。その中で子どもたちは「うまくいった」「よかった」という実感が残る。
- 教師は子どもの多様で複数の言葉・発言を拾い,つなぎ,生かす。「ここが○○君と一緒の考えだな!」
- 発問・指示ではない学習の価値を高める"教師の言葉がけ"により子どもの発言を価値づけていくことで,集団追究の質が向上する。「○○君のようにみんなと違う見方をすると,みんなで授業していく良さがあるんだなぁ…。」
- その授業での核心の部分は,教師から出してしまうのではなく,子どもの言葉からまとめへとつなげていきたい。
- 教師の"立ち位置"はとても大切。なぜなら子どもたちの表情や動きをよりよくつかむため。
- 机間観察で子どもたちのアイディアを拾っておいて,全体に広げる。
- 発言が出ないときなどは,つぶやきを聞きに行き,黒板にどんどん書いていくと子どもの考えが残る。
連続講座U 11月14日(金)「教科書を上手に使って授業を創る技」
小牧中学校の授業検討会より・・・
- 教師が力量を上げるには,素直になること。自分を見つめ,自分の課題を素直に受けとめていく。それを互いにはっきり確認しあう。
玉置先生の「授業力」の価値付けの変遷
- 若い頃,業者テストの成果に熱中した時期もあった。
「わかる→できる→身につく」のために繰り返しが必要。そのためには,教科書の問題の質・量の徹底分析,教材観・指導観を固める,集中力と再現性を子どもに求めるなどを行った。
- 子どもの言葉と動きで創る授業づくりに熱中(向山洋一・有田和正・野口芳宏氏より刺激を受ける)子どもの発言のおもしろさから授業を考える。
- 教科書のネタを上手く使い,子どもとともに授業を創り出すことのおもしろさを感じる。ごく普通のネタでおもしろい授業はできる。ビデオで課題を子どもたちに提示する。
- そして,現在へ
- いつもノートを傍らに置いて教材や教育資料をメモする。
- 経験は意図的に積んで整理する。記録を残すこと(デジカメ・授業メモ)を意図的に行う。
- 落語を授業に・・「授業は攻めと受けの絶妙なバランスの上で成り立つ」受けの訓練・復唱法
教科書を上手に活用するために「教科書の行間を埋める・読む」
- 教科書に記載されている最小限の内容や情報の中に隠されている必然性や系統性,内容の発展性を読みとり,授業の場面でいかす。説明することと子どもたちから引き出すこととを区別しておく。
- なぜこのような記述がされているのか,なぜこの数値なのかを考えながら教材研究をする。
授業の場面で
- 導入の時に子どもたちに教科書を開かせない
- 教科書に書かれていない思考のプロセスを始めに体験させ,子どもたちの考えを引き出した上で教科書で確認させると,子どもたちが発見したことが教科書に・・・。
- 作業の中で子どものつぶやきを聞き逃さず,子どもの言葉で授業をつないでいく。
- 教室で起こったことすべてを板書にとる。ノートは漠然ととらせない。
連続講座V 11月21日(金)「コンピュータのよさを生かして授業を創る技」
コンピュータを活用した授業変遷
- プログラム学習:CAI
コンピュータが教師の代わりに→しかし,現在はCAIの教育はほとんど行われていない。
- 提示型:シミュレーション型から発見型への発展
教材としてのコンピュータを活用したり,コンピュータでしかできない学習(情報を入力することで,そこから帰ってきた情報を子どもたちが整理することにより概念や法則などを発見できる)が可能と考え,ソフト開発を多く行った。
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現在:ネットワークの活用
同じ教室・授業内での掲示板への意見の書き込みにより,リアルタイムに互いの考えを確認することができる。しかも,ほかの子どもの意見を知った上での意見をさらに積み上げていくことが可能。
インターネットの活用:教材の宝庫である
- 教材が無数に情報として存在しているのでそれを上手く活用する。
授業の活用例として
- 家庭科での針の運針の動画をダウンロードして子どもたちに提示する。
- 社会の統計資料をグラフでリアルタイムに提示する。
- 算数・数学での作図ツールを活用して図形の学習に生かす。教科書では静的な図が,コンピュータで提示することで,動きが拡がり連続的な学習へと発展することができる。
コンピュータの活用の良さ
- コンピュータでシミュレーションをすることで子どもたちが必要な情報を整理することができ,知的な活動が活発になる。子ども自身で自分の仮説が試せる。
- 授業が躍動的になる。
- プロジェクターを活用してダイレクトに黒板に教材を投影することで,そのまま板書を書き込むことができる。
コンピュータを活用するに当たって
- コンピュータでその教材や題材を扱う良さがどこにあるのかを確認する。→教材研究・授業論に行き着く。
- コンピュータ室の学習だけでなく,ノートパソコン・プロジェクターを気軽に教室にもっていき授業をしていくことが可能。
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